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「ククク……何を言っている? 俺はお前を助ける気なんて更々ない。ただ、こいつらを全員斬り殺しやりたいだけだ」
彼は刀を構える。殺意のこもった眼で辺りの侍を睨みつけた。
「ええい! もうええ! そこの娘以外皆殺しや! イテコマせ!」
萬城は顔を真っ赤にして侍達に命令した。侍達はこれに歓喜する。
「ヒャッハー! ようやくっすか!」
「この娘も斬り殺しましょうよ! 俺はこれぐらいの娘をじっくり嬲り殺すのが大好きなんでさ!」
こういった侍達は辻斬りと同じだ。自身の価値を、人を斬り殺すことでしか見出せない。
「全く……反吐が出る」
赤龍のその言葉を皮切りに、斬り合いが始まった。しかし、赤龍は襲い掛かる侍達を、物ともせず次々と斬り伏せて行く。何人かの侍が赤龍の周りを取り囲んだ。同時に周囲参陸〇《360》度から刃が襲いかかる。しかし、その刃は互いが衝突し交り合って終わった。彼等の標的は上空から落下すると弧を描くように刀を回し、彼らの首を落とした。
「っひいいいいいいい!」
萬城はみっともない叫び声を上げて随分少人数になった部下の侍たちと逃げて行った。
「あ…………有難うございます……お侍様……」
転がった死体に怯えながらも、精一杯の感謝を込めて、老婦人はお辞儀をした。しかし、烏酉は尚も赤龍を睨んでいる。
「これだけ人を殺しておいて、涼しそうな顔しやがって。それで助けたつもりかよ! 見ろ! 死体の山だ!」
「これ……烏酉…………」
老夫婦が烏酉を戒めるが、彼女は尚も赤龍に言う。
「こんなの……こんなの誰も喜ばないよ!」
「それがどうした」
赤龍は目の前の少女の言葉がバカバカしくて仕様がなかった。戯言だ。
「誰も喜ばない? 俺を誰だと思っているんだ? 俺は侍だ。刀で人を斬り殺す人間が侍だ。そんな人間が誰かを喜ばす? 笑わせるな」
「これだから……侍は!」
その時、幸か不幸かこの張りつめた空気を打ち破る訪問者が現れた。
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