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 服役囚には、全てが禁じられていたのだ・・・死ぬことさえも。  義人は、生きるしかなかった。徹底的に痛めつけられ、無常な時間のサイクルに巻き込まれ、それでも尚、呼吸をした。生きているとは言い難かった。鎖につながれた犬より数段惨めに、生かされていた。  彼は全てに投げやりで、無気力だった。積極的に罪を償い、更生しようという意志がないのだから当たり前である。些細なことからトラブルを起こし、独居房に行かされたことも度々だった。しかし、全て行った端から忘れていき、気に留めなかった。気にする気力もなかった。年月を数えることもやめ、苦しいといった感覚もすっかり麻痺していた。風呂場の鏡に映る顔は、すっかり頬の肉が落ち、目尻にも口角にも張りがなくなり、娑婆にいた頃の面影は拭われたように消えていたが、実はこの時、既に14年の月日が流れていたのだった。20台という華の時代をむざむざと犠牲にした34歳の男の顔は、50歳といっても通じるほど、げっそり老け込んでいた。
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