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再び、雷鳴。外は荒れ狂っていたが、部屋の内部は―もちろん、彼を除いてだが―穏やかだった。四つのうち三つのベッドは埋まっていて、男たちの腹立たしいほど安寧な寝息が規則正しく聞こえてきた。
不意に彼は、窓に背を向けた。ぎごちない足どりで、部屋を突っ切っていく。安物のブルゾンに覆われた背は酷く猫背で、くたびれたような手に持ったサックを、さも重そうに乗せている。脚はよく見れば長いのだが、ズボンがよれよれなために台無しになっている。部屋が暗いため、顔は見えない。
彼はサックを持っていない方の手でドアノブを掴み、そっと部屋から出て行った。廊下も既に消灯されているため、眠りこけている男たちを妨害する一条の光もなかった。彼らは何も、気付かなかった。
一分ほど経ったであろうか。再び雷鳴が轟いた。地から建物を揺さぶるような大音響が、闇を劈く。音が響いていったのは、どこまでも闇だった。雷光はなかったのだ。
沈黙が尾を引いた。
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