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「俺・・・俺、本当は名前、漢崎義人っていうんです・・・分かるだろ。」 男―義人は上目づかいで老工場長を見た。大して驚愕していなさそうな、でも微かな動揺の見られる顔に向かってねじこむように呟いた。 「殺人犯」 沈黙。何もなかった。彼は義人の言葉の重大さが分かっているのかいないのか、絶叫するでもなく、逃げ出すのでもなく、ただ義人の目を見ていた。 「でも本当は・・・何ていうか、その、周りが滅茶苦茶で、気付いたら俺も悪いってことになってたんだ。よく分かんねえ。でも、これから言うこと、全部本当だから。嘘はつかない・・・信じてくれますよね?  俺、生まれたときから貧乏だった。親父もお袋も、働いている姿しか見たことねえよ。それでも、借金をしていた。昔親父が事業に失敗しただか何だかで。中学は何とか出たよ。でも金もないし、頭も悪いしで、高校には行かずに働いた。ここみたいな工場でね。でも、俺が16のとき、親父もお袋も、交通事故でいっぺんに死んだんだ。」 義人は鼻をすすりながら、「自殺かもしんない」と自嘲的に笑った。 「それは・・・」 「そう言えますよ。二人とも俺のこと、愛してくれていたとも思えないし。」 義人の声は少し落ち着き、その先のことを話し始めた。
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