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「それは、だな……」
恭也は顎に手を置いて、思考を巡らす。
適当には言えない。
相手は名前以外は分かっている。
つまり、誤魔化しは効かない。
(白と黒……パンダか? いや、パンダなら名前が出てくるはずか……)
思考を巡らせれば巡らせるほど、恭也の表情は険しくなる。
「恭也君? どうしたの?」
無言の恭也に詩恩は小首を傾げた。
不味い。早く何か言わないとバレる。
「詩恩」
「うん?」
「お前は……あー、なんだ。その動物を直接見たことあるか?」
さりげなく話を逸らして時間を稼ぐ。
「えと、多分ないと思う、かな」
「そうか……」
恐らく一般的にはなかなか目にしない動物。
というか、そんな情報があったところでこの魔物の正体は分からない。
(考えろ。何か突破口があるはずだ……!)
これまでの幾多の困難を乗り越えてきた。
突然の拉致。突然の家族生活。優太のヴァルハラの発症。詩恩のもう一人の人格。
それに比べたらこのような困難、越えられないわけがない。
(冷静になれ……! クールになれ……!)
本当にこれは動物か?
古(いにしえ)より伝わる神の使い魔という線もある。
はたまた人間の環境破壊に怒り、地中の奥底から目覚めた邪神という可能性も。
(いや、もしくはこれは元々人間で、未知のウィルスによって――)
主旨が外れる程、恭也は静かにパニックになっていた。
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