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「…う、ううん……」遙は目を覚ました。
知らぬ間にベッドの上で横になっていた。
オレンジ色の残陽に成りかわり、母親の部屋は月の明かりに照らされている。
先ほど見た女はいなかった。
遙ははっとした。
部屋から飛び出て、隣の自室を確認したあと、母親を呼びながら慌てて階段を駆け下りた。
「ママ! ママ! どこなの!」
遙は家じゅうの電灯をつけ始めた。
2階の3部屋、いない。
1階のリビング、いない。
トイレ、バスルーム、客間、すべて確認したが、母親は見当たらない。
玄関に放った通学用のショルダーバックから、遙は携帯電話を取り出した。
そのままキッチンルームに向かう。
遙は、祈るような気持ちで母親の携帯電話にかけた。
だが、その手が止まった。
「でんわ、それ、けいたいでんわ」目の前に立ちはだかる知らない男が、体格通りの低い声を上げていた。
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