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遙は男を仰視した。「ソトコ? 誰なの?」
男はカメラを持った手を上下に揺らした。
「ソ、ト、コ、ソ、ト、コ」と繰り返す。
「は?」恐怖心を悟られないよう、遙は普段使わない言葉を発した。「オッサン、超ウザイんだけど」
この得体の知れない者に負けるわけにはいかない。
比較的大きな住まいで、母と二人きりで暮らしているのだ。
親類のいない私達。
頼れるのは自分自身だ。
その混じりけのない感情がわき上がると、遙は玄関に立てかけられた護身用のゴルフクラブを一瞥した。
その時、男の目線が携帯電話から遙の顔に移った。
ゆらゆらと揺れた男の動作がピタリと止まり、遙の顔面に釘付けになっている。
遙はびくりと背筋を伸ばした。
「な、何?」
「ソトコ! おまえ、ソトコオオオ!」男が両腕をあげて迫ってきた。
「きゃああ!」遙は携帯電話を男の顔面に投げつけた。
「ゴワッ!」携帯電話は男の鼻っ面に命中した。
瞬時に床を蹴り、遙はゴルフクラブを握った。
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