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「う、うう…」男はうずくまった。
次の一撃のため、遙はゴルフクラブを振りかぶる。
カメラを放った男は、遙の携帯電話を両手に握っていた。
(なんなのよ…??)男を見下ろす遙の手は小刻みに震えていた。
「こ、これ、けいたいでんわ」男は、おもちゃを与えられた幼児のように携帯電話を弄び始めた。
もの珍しそうに閉じたり開いたりしている。
「私の携帯がそんなに珍しい?」
遙は構えを崩さずそう聞いた。
「う、う、うん」男は何度も頷きながら、携帯電話を逆に折った。
パキリと音が鳴り、遙の大切な通信手段が二つに分かれた。
「な、なにすんの!?」遙はゴルフクラブを放り投げ、男の手から携帯電話を引っ掴んだ。
「うう…かえせ」男は遙を仰視した。
よだれと鼻水で、男の口の周りはベトベトになっていた。
「な!?」遙は思わず仰け反った。
男の目が真っ赤に充血している。
それは、遙にとって化け物を連想させるのに充分だった。
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