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圭介たちは廃屋の前で立ち止まった。
赤い煉瓦屋根で、所々ひび割れたコンクリ造りの1軒屋である。
2階の窓ガラスが見事に割れていた。
「うっわー」真理恵の第一声だった。
こぢんまりとした庭らしき場所は、畑を耕していたのだろうか規則正しく置かれたブロックに囲まれていた。
土は干上がっている。
玄関の戸は開いたままであった。
先に足を踏み入れたのは佐川だった。
「わ、蜘蛛の巣」佐川が、鬱陶しそうに細かい糸を振り払う。
続いて圭介が入った。
破られた障子の戸の向こう側は、リビングだったろうか。
ブラウン管テレビ、コタツ、木製の戸棚などが置いてある。
腐っているのか、畳には所々黒くにじんだ部分があった。
「まあ上がろうや」後に続いた横越が促す。
圭介が横越に目をやると、その背後に真理恵がいた。
「真理恵、どうした?」圭介は声をかけた。
真理恵はかぶりをふった。
「私には無理…蜘蛛、めっちゃ苦手…ね、陽子さんもそうでしょ?」
ブランド物のロゴ入りTシャツに、ミニスカートを身につけた真理恵の隣に陽子がいた。
(ソトコにはファッションセンスがないのか…)
圭介は独りごちた。
陽子は、学校の制服のような開襟シャツに細身のジーンズ姿である。
「うん…」
陽子はこくりと頷いた。
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