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「これじゃあ、私もソトコなんて呼ばれるのかなあ…あ、ソトエかな」
真理恵が嫌みったらしく言った。
横越が笑った。
「まあそうだな! 行動を共にできない者の称号だ」
「ご、ごめんね」陽子は苦虫を噛み潰した。
(はあ…)圭介は肩を落とした。
陽子は決して美人ではないが、愛らしい顔つきであった。
吊り上がった二重の大きな目。
ツンとした小さな鼻。
その下の淡い色した猫のような口。
時には男心をくすぐる、小柄でおどおどとした態度。
『ミステリ倶楽部』の皆でクラブに行っても、バーに行っても、陽子は必ず外で待っていた。
決して先に帰ることはない。
遊び疲れた圭介たちが店を出ると、主人を待っていた小犬のように小走りで近づいてくる。
雨の日も傘をさしてじっと待っている女だった。
「じゃ、次行こうか」横越が、首を傾けながらそう言った。
「え-! また歩くの!?」青いシャツを汗でびしょ濡れにした佐川が、うんざりした声を上げた。
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