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一番奥の部屋の和室には大きな仏壇があった。
「すげーな」横越が口を開く。
金箔で作られた仏壇の下には位牌が倒れていた。
「さっきの音かもな」位牌を手に取り横越は続けた。「それにしても罰当たりだな」
圭介は、亡くなった者たちであろう白黒の遺影を眺めながら首を縦に振った。
「気味悪いわね」真理恵が言った。「もう出ましょ、こんなとこ」
圭介は眉間にしわを寄せた。
「そんな言い方ないだろ」
真理恵が反論した。
「気持ち悪いものは気持ち悪いの!」
(なんて女だ)圭介は真理恵の内面を心底嫌った。
さっきの陽子に対する侮辱だってそうだ。
陽子は出入りの激しいこのサークルで、圭介とともに残った部員だった。
圭介が大学に入学すると、色白のひょろなが男が勧誘してきた。
「まあ、格別めんどくさい活動はしてないけどさー、あ、とにかくミステリー小説を読んでお互い意見しあうクラブだよ」
ミステリ小説やホラー小説を好んだ圭介は、なんとなく入部した。
集合場所のファミレスに入ると、10人足らずの男女に入り交じって陽子がいた。
陽子も入学直後に誘われて、断り切れずに入部したらしい。
活動といえばそれらしき活動はなく、なんとなく皆が集まってどこかに遊びに行くといく程度であった。
圭介と陽子は、そのなんとなく年月が過ぎた中でずっと一緒にいた仲であった。
「さっきのこと、言い過ぎた?」真理恵が圭介の心を見透かすかのようにそう聞いた。
陽子のことを言っているのだろう。
「あ、ああ、そうじゃない、違う」圭介は真理恵に背を向けた。「ここを出よう、佐川たちが待っているから」
「ああ」横越が抑揚のない声を上げた。
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