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それから数軒の家をまわったが、くつろげるような場所はなかった。
日が沈みかけている。
「なんだあ、なんだか面白みもかけらもない一日だったやん」
真理恵が愚痴った。
横越が圭介に、どうするよ、と目で訴えている。
佐川は、勝手にチューハイを飲んで上機嫌だった。
手には横越に返してもらったハンディカムが握られていた。
「帰るか…」圭介は隣の横越にぼそりと呟いた。
「ああ、そうするか…」横越は疲れ切った様子で同意した。
横越のもくろみは見事に外れた。
圭介は内心ほっとしていた。
「じゃ、真っ暗になる前に帰ろう」彼はミステリ倶楽部の部長よろしく、右手を肩まで上げてそう言った。
「そうだね」真理恵がタバコに火をつけながら応えた。
その時、陽子が口を開いた。
「駄目…帰れないよ…」
圭介をはじめとする他の部員4人が一斉に陽子に向いた。
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