阿砂呉村

35/36
前へ
/74ページ
次へ
子猫はその後、圭介の親類に預けられたのだった。 (陽子…)圭介は、二人で子猫を病院に連れて行った光景を思い浮かべていた。 真理恵が張り合った。 「あらあ? 三上部長、ずいぶんと陽子さんにやさしいやん」 「違うよ、そんなんじゃない」圭介は咄嗟に陽子の肩から手を離した。 「今日はとくに収穫は無しだ、帰ろう」 圭介の意見に横越が頷き、後ろを振り向いた。 「ああそうだな、おい佐川、懐中電灯もってるか?」 真理恵が口を開く。 「あれ? 佐川さんは?」 横越が首を傾げた。 「いねえ、どこ行ったんだよ」 先ほどまで上機嫌でいた、佐川の姿が消えていた。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加