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(ケイスケ…ケイスケ…)遙は、玄関でみた肉のただれた女の言葉を思い浮かべた。
「ケイスケ…あなたがケイスケ?」
男はうんうん頷いた。
「そうだよ! 思い出したか? ここにいてもいずれは見つかってしまう、場所を変えよう」
遙は、頭のなかの女の声に応じた。
(この男のひとは一体誰なの?)
女がすぐに反応した。
〔あなたの父親なの、でも遥はまだ生まれていない〕
遙は両手で口を押さえた。
(どういうこと!? じゃあ、アナタは??)
〔うん…〕女は少し間をあけた。〔私は遙の母親なの〕
(嘘でしょ??)遙は呆然とした。
まるで夢をみているようだった。
(この人が私の父親・・・)遙は、父親であるケイスケの顔を見張った。
「どうした?」ケイスケは遙の肩に手を置いた。「大丈夫だ、俺が陽子を守る」
遥の胸がときめいた。
それは、未来の父親になる男性に対してからなのか、比較的格好の良い男性に優しくされたからなのか、自身でもよく解らないでいた。
だがその瞬間、遙は陽子に徹することに決めた。
「うん! 生きて帰ろうよ!」
遙のその言葉に、ケイスケは力強く微笑んでいた。
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