344人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
「タダイマぁ!」
――って。
夜中もテンション最高潮ってアイダさんらしいけど。
玄関で靴を脱ぎ捨てる気配。
ドカドカ凄い足音立てて、
「――ニノぉ!大変大変!!」
って走ってくるから。
今何時だと思ってるんだよ。
ってマリオしながらごろ寝してたソファから起き上がって迎えた。
「ニノぉ!見てよこのコ!」
勢いそのままにアイダさんが目の前に立ちふさがったから、
俺は仰け反り気味になった。
「――ナニそれ」
アイダさんは満面の笑みで、俺にその物体を両腕を伸ばして突きつけてきた。
黒目勝ちのその物体から、
――ナァ。
って。か細い声。
つやつやの黒い毛した長い胴がブラブラと俺の前で揺れてる。
「ナニって…ネコだよ?」
かーわいいでしょ?って言う、アナタの笑顔の方が可愛いから。
「棄ててきなさい」
情が移ったら困るのはアイダさんだよ?
っていうか、そんなに簡単に貴方を喜ばせるなんて、小さい癖に赦しがたいカタキだよ?
「え?ヤダよ!こんなに小さいのに可哀相!」
な~?って、話しかけながら小さな黒い塊にキスなんてするなって!!
俺は苛立ち紛れに矢継ぎ早に、
「棄ててきなさいって!ネコなんてなつかないし!祟るし!恩を忘れるし!ロクなもんじゃない!家に置いたら三味線にするよ」
今まで抱きしめたいくらい輝いてたアイダさんの笑顔が突然曇った。
『しまった…』
言い過ぎたって、気付いたら。
「――酷いよニノ!だったら俺と一緒にネコ飼ってくれそうなコノルンとこ行くよ!」
え?…なんで此処でルン君?一緒に飼ってもらうなんて、
――ネコ住まわせるより我慢できないし!
アイダさん、俺が絶句してるの見て、ちょっと戸惑ってる。
そうだよ壱成。たかが仔猫に負けてどうすんだよ。っていうか絶対負けねぇ。
取り敢えず落ち着くために大きく一つ、深呼吸だ。
最初のコメントを投稿しよう!