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夢幻の館と呼ばれる豪奢な洋館に住む青年は少女の願いを叶えた。
彼女を手引きし、後は見守るだけの役目を果たし終えた青年はラウンジの応接間でゆったりと寛いでいる。
「最後に誰かに会いたい。捜し物を見付けたい。成し遂げれなかったことを成し遂げたい。在り来りだけどいちばん多い願いだな……」
頬杖をついて呟く。今まで何人も相手をしてきたが存外苦労した覚えがない。
青年が此処に始めて来た時は彼女と同じようなものだった。だけど誰かがいて未練を聞いてくれた訳じゃない。もとから一人だった。
夢幻の館それの最初の来訪者であり、自身は願い事を成就せぬまま時を過ごして彼女のような亡霊の未練を聞いてきた。
慈善活動なんて柄じゃないと思っていたが案外悪くない。幸い夢幻の館に備わった魔法みたいな道具を好奇心で使用し、お悩み相談という偽の理由で無聊を慰めるつもりが本職みたいに板についてしまった。
自分は生前褒められた人間じゃなかった。多分、自分が犯した大罪を拭うまでは此処から出られないだろう。
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