夢幻の館

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「しかし、未練がましいのは僕か。まだ過去を引きずっているんだから」  青年、御影はそう自省する。生前、有名外科医だった御影は難病を患っていた実妹に必ず治してみせると約束した。  その言葉で妹を勇気付け、希望を与えたのに御影は手術を失敗し死なせてしまったのだ。  御影の両親はとうの昔に亡くなっていた。たった一人の家族を死なせた御影はやがて現実逃避するかのように睡眠薬を大量摂取し死亡した。  夢の中でまどろみ、そして目覚めた御影はいつの間にか夢幻の館に行き着いていたのだ。 「でも此処は僕の願いが叶う場所でもあるんだね」  そこで自分に与えられた使命を自覚する。今度は違うカタチで誰かを助けてやるという使命を。 「与えられた二度目の機会だ。たいせつにしよう」  また誰かを救える力を手に入れたかけがえのない僥倖を受け、御影は嬉しかった。  ソファに深くもたれ掛かり夢を見るように瞼を閉じ、御影はゆっくりと息を吸って吐く。 「さて、と。次のお客様は誰かな」  御影という名の青年はいつか自分の罪が拭い去れる日を心待つ。  そして行き場のなくなった魂が訪れた時、同じ台詞を口にするだろう。 『ようこそ夢幻の館へ。此処は行き場のなくなった魂達の願いを叶え、解放する場……』        夢幻の()
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