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そう私は確かに死んだはずなのだ。砂嵐映像さながら漠然とした記憶から模索した事実。
それだけははっきりしている。
理解し難いのは、なぜ私の意識と体は此処にあるのか。
花瓶にいけられた華が歩道の片隅に放置されていたのを見る。
半ば悔恨と締念の気持ちの混じった短い嘆息を吐き、踵を返す。
死因は事故死だ。もちろん自殺でない。生前は何かから逃げるほど臆病者ではないと記憶している。
決して私は自ら望んで危険信号は渡らなかった。
あの時、視界が朱く染まり世界が暗転してから私の意識は途切れた。
「ああ、そうか……」と胡乱げにある事を思いだし、納得した。
私には死後に辿り着いた場所がある。
謎の青年が待ち構えていた『夢幻の館』という摩訶不思議な場所に。
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