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『ようこそ夢幻の館へ。此処は行き場のなくなった魂達の願いを叶え、解放する場……』
私が見た異常な光景。私の知らない洋館のラウンジ。
そこの応接間に座っていた青年が開口一番に言った台詞だ。
正体不明な謎の青年、見た目は二十歳前半辺りだろう。
『……あなたは、誰ですか?』私は遠慮気味に尋ねた。
青年は少し考えた後、応える。
『僕の名前は御影。そして此処は君の望みを叶える場所。“夢幻の館”と呼ばれる不思議な世界だよ』
その言葉の意味を理解出来なかった。
『そんな、うそ……』
青年はゆっくりとかぶりを振る。何もかも見透かす青年の眼差しが彼女に向けられた。
『うそじゃない。現実。君が此処に来たのは死んだからだよ』
悲痛な報告だ。やはり、あの出来事は本物だったのだ。
私は頭を抱えて俯いた。次第に澎湃(ほうはい)と涙が湧き出る。
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