夢幻の館

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 街中をあてもなく逍遥(しょうよう)する。私の気分は晴れる事のないこの世界と同様に灰色のままだ。  私に与えられた時間には限りがある。それは特別な二十四時間だ。 『君はこの限られた時間を有効活用しなければいけない』  青年はそう言っていた。そのことを思いだし、私の足は自然と目的地へと向く。 「いかなきゃ」  彼との約束がまだ残っている。それが終えるまでは私は後悔したままだ。  ――彼に会いたい  彼の長年見続けた夢を成就させてあげたい。  それが私の未練。他人が聞けば笑うだろうけど私は本気だ。
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