夢幻の館

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 私は高校生だった。今も学校の制服を着ている。内気で内省的な性格である私の唯一の趣味は絵を描く事だ。  高校生になったら部活動で他者との親睦を深めたい訳でもあり、美術部に入部しようと思い立った。  しかし、学校は美術室があっても美術部はなかった。  いや正式にはあるが廃部寸前だったのだ。  ある放課後に美術室に寄ってみた。誰もいない室内かと思いきや、ひとりの少年がいた。  名前は知らない。顔は何回か見た事がある。人目で優しそうだと思ったひとだ。  彼は私に気付かず絵を描いていた。  なんだかよく解らない次元の絵だ。だが、彼の思い描く想像の世界がそこにあった。
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