3793人が本棚に入れています
本棚に追加
Side氷冬 椿輝
「まさか同じクラスだったなんて…」
俺は一年の時から生徒会に所属をしていたので、あまりクラスには居なかった。でも、本当に始めの1週間くらいはクラスで授業を受けていたのだ。
「朝礼や点呼の時にこの名前を聞いたことがないです…」
朝礼の出席を取るときには必ず全員の名前が呼ばれる。しかし、彼の名前は聞いたことがない。
「去年から今まで、Sクラスは転校生やクラス替えなんかもありませんし…」
…何故だ?
「…言ってみればわかりますか…」
そう言って、他のクラスとは少し離れた場所にあるSクラスの教室へと入る。
「…!?」
今は昼休みである。しかし、このクラスのほとんどの人間が何かしらを教室で食べているタイプの者だったらしく、席は9割ほど埋まっている。
「…なんで副会長が?」
このクラスの学級委員長である(と記憶している)男美上 潤(ミカミ ウル)が呆然と呟いた。
「…いきなり失礼しました。私は春川 桜という人物を探しているのですが、ご存じないですか?」
ざっとクラスを見回しても昨夜の顔は見当たらない。
「なぁ…春川 桜なんて聞いたことあるか、狼牙(ロウガ)?」
「…聞いたことがない。」
美上の隣にいた、目付きの悪い髪を立てた男が、何かを思い出すような顔をしたあと答えた。
そのあとも、クラス全体でヒソヒソと話していたが結局分かるものは居なかったようだ。
「すみません。どうやらうちのクラスにわかる人間はいないようです。」
「そうですか…このクラスの人間だと生徒録に書いてあるのですが…」
その言葉がクラスにまたさぁっと広がった。よく聞くと、「マジかよ!?」「うちのクラスは転校生やクラス替えってなかったよな!?」など、先ほどの俺のような反応をしているようだ。
そして、そのざわめきの中で
「あのー…」
「!?」
正面からブレザーの端を引っ張られた。
最初のコメントを投稿しよう!