色つき桜

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side 氷冬 椿輝 生徒会の仕事を終え、疲れて部屋へ帰ると、 「ご飯とお風呂、どっちにします?」 …新婚か!?…いや、落ち着け。桜の事だから、事務的にどちらか聞いているだけだろう。 「…………………ご飯。」 己の色々な欲を抑えながらの苦汁の選択。早く着替えて桜の作った飯が食べたい。 「あ!椿輝君。座って待っていてくださいね。今ご飯持って行ったら最後ですから。」 お盆の上に茶碗を載せた桜は俺の前で止まり、茶碗をそれぞれの場所に置くといそいそと椅子に座る。 「「いただきます。」」 今日も桜の料理はうまい。栄養バランスもしっかり考えられているようで、食卓の彩りもきれいだ。 「…うまい。」 「よかった…椿輝君においしいっていってもらえるのが1番嬉しいです。」 満面の笑みの桜。それはとても華やかで、少し儚い。どんな表情でも儚さを合わせ持つ、桜独特の雰囲気だ。 「…ん?」 今日は、桜の首元が大きく開いているな。…綺麗な首筋だ…………ん?虫にでも刺されたのか?首元にぽつんと赤い痕がある。 「どうしました?」 「いや、何でもない。…料理がうまいだけだ。」 「えへへ…」 …へラリと笑う桜も、とてもかわいいと思う。
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