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side氷冬椿輝
桜を下ろすと、先ほどよりも速度を少し上げて車を発進させた。
「…」
車の中に流れるのは、俺が寝ている間に起こった世界の出来事。英語が多いが、その他の言語も混じる。それを聞きながら今後の対策を考え、ある一つのビルの地下へと車を移動させる。
「おはようございます。昨日はお疲れ様でした。…荷物をお持ちします。」
「ああ。」
俺は車を降りてすぐのエレベーターに乗って最上階へ向かうと、執務室へ歩きながら秘書から昨日の様子を聞き、的確な指示を出す。
「…今日の予定は以上です。」
「お前…私を徹夜させる気か?どんなに仕事が残っていたとしても、9時にはこの部屋を出るからな。」
「分かっています。あなたなら終わると判断したので組んだまでですから。」
秘書から予定を聞かされると、早速デスクの隅に山積みにされていた書類へ手を伸ばす。
「あぁ、そうだ。面白いアイディアが思いついたから、それを実行しようと思っているんだ。」
「…何でしょうか?」
「年功序列を、実力重視のものに変える。」
「それは一体どのようなものでしょうか?」
「私の周りのジジイ共は、働きもせず俺に媚びへつらっているだけだ。でも、そのすぐ下の奴らは真面目で誠実だ。たとえ上の指示で仕事をやったとしても、あれだけ丁寧な仕事をしているなら十分に仕事を愛してると言ってもいいだろう。」
「なるほど。使えないやつを切るのですね。」
「そうだ。俺がここの跡を継いで3年が経つ。そろそろ自分好みの会社にしてもいいだろう?」
「そうですね。それもいいかもしれません。…で、自分は何をすればよろしいのでしょうか?」
「ある人物と連絡を取ってくれ。資料はそこだ。明日か明後日には話をしたいから、呼んでもらいたい。」
「…かしこまりました。」
資料に目を通した秘書は、俺に一礼すると素早くこの部屋を去った。あいつのことだから、明日には確実に会えるだろう。
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