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ただ今夜中の12時です。
ちょっとだけ優等生という立場をしている僕の、唯一の日課をやりに来ました。
学園の外れにある森の奥、ぽっかりと開いた土地があり、かなり大きな桜の木が植えられています。今日は満月です。桜がぼんやりと発光しているかのような雰囲気に包まれ、意識が遠くなりそうです。
「さてと…はじめますか。」
桜の木の下で取り出したのは、一台のヴァイオリン。これは僕の宝物です。
「今日は綺麗な夜ですね…あの曲がいいでしょうか…」
ひとつの曲を思い浮かべると、ヴァイオリンを構えます。
深く息を吸って…
「…ふっ…」
弾きはじめます。
澄んだ音が、この空間を支配しています。桜の雰囲気と相俟って、気持ちがいいです。
「~♪」
本当はヴァイオリンを弾きながら歌うことはいけないことなんでしょうが…楽しいからいいんです。
音楽は、"音"を"楽しむ"と書くんですから。楽しまないといけないんです。
しばらくヴァイオリンを弾きながら歌っていると、茂みからガサッと音がしました。動物が立てるような自然な音ではありません。
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