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「…」
問われるがままに出ていく。しかし、声が出なかった。
目の前の存在が儚すぎて。
一言言葉を発しただけで消えてしまいそうで。でも、もっと聴きたかった。
「…なぁ…」
「何ですか?」
「お前の演奏聞かせてくれないか?」
桜の精かと思うような人は、少し驚いたような顔をした後
「わかりました。でも、邪魔はしないでください。」
と言った。またあの音が聴ける。そう思うと嬉しかった。
「わかった。」
それだけ言うと、大人しく桜の木に寄りかかるように座った。
「~♪」
再び演奏が始まる。その音は、夜桜の神秘的な輝きにぴったりだった。
演奏が終わったとき、時計の針が一周回っていたが、特に気にすることでもなかった。それより…
「…名前は?」
「…は…春川桜です…」
ようやくこの人の名前が分かった。
「覚えた。」
学校での生活でも会ってみたい。そう思った。
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