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爽やかな風が頬を撫でる。
暖かい日差しで、覚ましかけていた目がまた、閉じようとする。
「zzZ」
訂正。閉じていた。
「ハッ」
バッと体を起こして、身の回りに異変が起きていることを確認する。
「……異世界?ですか…」
思っていたよりも冷静に物事を確認するこの猫――元少年。新谷 空(あらたに そら)は、自分の異変には気付いていない。
バカだ。
「ん?…毛むくじゃら?肉球?……どうなってるんですか!!!!!!!??????」
落とした視線の先に、自分の体には無い毛があり。手には、肉球がついていた。
ソラは天に向かって立ち上がり、大きな声で叫ぶ。
「はぁはぁ」
叫んで落ち着いたのか、肩を荒く上下させながら、その場に座り込む。
「はぁ~……あれ?そう言えば。何で二本足で立てたんでしょう?」
敬語を使っているので冷静で賢いと思っていたが、間違っていたようだ。
バカだ…(二回目)
「…立って…喋る動物?」
どうやらまだ自分の姿がわからないようだ。
まぁ、毛と肉球で大体獣って言うことがわかるが、何の動物かは鏡でも見ない限りわからないだろうな。
「……考えるのは止めましょう」
諦めたようだ。
実にバカだ…(三回目)
「……何故かイラつきます」
ソラが草の上で座りながら、そんなことを思っていると、後ろの草むらがかすかに揺れた。
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