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「こちらは玉手瓶。
本当に苦しい時にお飲み下さい。すぐに効果が現れるとは限りませんが、それを解放する力があるのです」
「ただし、容量には気をつけな。
どれだけ飲むかは自由だ。
絶えられないような身体痛みなら、嘗める程度で充分だ。
もし死にたくなる程の悲しみなら、一口程飲めばいい。
飲む量が多ければ副作用は強い。
人生で一本だが、充分あまると思うぜ」
「何か質問はございますか? 」
ここで、ペナ島太郎が口を開いた。
「副作用ってどんなの? 」
「わかりやすくいいますと記憶の削除に繋がります。嫌な記憶を薄める訳ですからね。
前に半分程一気に飲んだ男がおりました。彼は・・・・・・身体が老人になりまして、記憶が殆どなくなってしまわれました。
それ以上は、過去に例がありません」
「ふーん。もういいよ。そうだ、君の名前は? 」
この丸夫という男は今まで先に名乗った事はない。
彼は不機嫌そうに眉をつり上げ言い返した。
「・・・丸夫」
どうやら、そうでもなかった様子。
「では丸夫、僕に抱きついてくれないか? 」
「てめぇ、何気持ち悪い事言ってんだよ」
「頼む、一生のお願いだ」
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