金魚

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「女子を落とすのがまことに上手いですねえ…」 「ははっ!まあねー、何かと役立つもの。」 「悪いお人」 「まあまあ、そんなこと言っときながら全然なびいてないくせに。」 優しい人 「君のそんなとこがおもしろいんだけどね」 だけど 底冷えするような冷たさを持っている人 「…悪い人。」 どこか自分と同じ匂いがするような 「はははっ、そう言うなよ霜月。男なんてそんなもんだって」 だけど混じり和えない色 「狩猟本能ってゆうのかなー、」 …きっと私の色もそんな色 「霜月?」 似た色ほど近づきやすくーー 「どうかした?」 「はっ、すみません、少しぼーっと…」 「沖田さんっ!!!」 勢いよく開いた襖の向こうには額から汗を流し肩で息をする見知らぬ人。 「んもう、慌ただしいなあ。開ける前に声くらいかけてよ。」 そう言いながら私に近づけていた顔を離し、襖の方へ目をやった。 私は振り向きもせず室の片隅に置かれた金魚鉢を眺めていた。 「もっ、申し訳ございませぬっ…」 「もういいよー、どうしたの?」 「はっ、なっ、永倉殿が酔っ払って揉め事を!」 「もーまたあ?佐野さんに止めてもらってよ。」 「それがご一緒になって騒ぎを…」 「だよねー…。ほんっと喧嘩っ早いんだから。」 はあっと浅く溜め息をつき私の手をとった。 「またぼーっとしてたでしょ?」 「ふふっ、総司さん忙しそうね。」 くすっと笑うと同じように口元を緩めた。 「また来るよ。ごめんね?」 「はい、お待ちしております。」 がばっと立ち上がり振り返らず出て行く。 「どこだ?」 「はっ、此方にございます…」 襖の向こう側で聞こえた声は、みるみる遠くなり やがて聞こえなくなった。 ーー新撰組一番組組長、か。 「沖田総司…つかめない人。」 もうしばらくすれば夏も終わる。 そろそろ次の手段、か。
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