陽炎

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「あ!霜月の姉はんようやく起きはったんか?」 「え?」 「なにをまだ寝ぼけたみたいな顔して。もうすぐ夕げの支度が整うよってに、」 「もうそんな時間?」 「…昨日飲み過ぎはったんやろか、もうこの姉さんは…」 煩わしいなあ この厚化粧。 「昨晩よほど遅かったんやろか」 わっ、何、近い近い 「知ってますねんえ、どなたが来てはったんか…」 化粧くせーって。 「そらあ、お楽しみになったんやて?」 …いやいや なんなのその顔。 「…ぅぷっ、くくっ」 厭らしすぎる。 如何にもすぎる。 「何をわろてますのん、嫌やわ姉さん、人を馬鹿にして。」 「違います、そんなんじゃ…」 面白かっただけです。顔が。 「はーっ。姉さんのこと悪く言いたくはないですけど、皆良く思ってはいないんですよ?なんや上物のお客ばっかりとってはるやろ?それに姉さん、誰ともあんまり関わらんみたいやし…謎めいてはるから…いらん噂もたってるの知りません?」 どこにいってもこれ。 だっていつも何かを装わなくちゃいけなくて 「…ふふ、そう。まあ、火のないところに煙は立たずと言うでしょう。」 「えっ、じゃあやっぱりあの噂も…」 私はどんな噂かも知りませんがね。 「さあ、ね。ふふ、では私は少し。」 自分の噂なんてどうでもいい。 知りたい事以外知りたくない。 「あっ、姉さん!夕飯は…」 「あ、そうだ。竹叔父に今日は店でないと伝えておいてくれます?」 「えっ、ちょっと、 またそんな勝手を!そんなんやから皆に色々言われますねんえ!」 言う事なくなるまで色々言えばいいじゃない。 どうせ誰にも分からないから
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