陽炎

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完全にやる気を削がれた私は今晩は働かないと決め、離れへとつなぐ渡り廊下に腰を下ろしていた。 ーー薄い月。 敷地を囲うように塀がたっていて、 それを挟んで向こう側は細い路地。 そしてその路地は夜になり一際賑やかな大通りに繋がっている。 赤い提灯が浮かんでいるのがここからも見える。 白い面に紅を塗り 鮮やかな色袖に包まれた遊女達。 そしてその煌きの 虜となってしまった男達。 塀で姿は見えなくても、大通りから聞こえる音で想像できた。 この島原では 皆ひと時の夢をみている。 永遠に続く事を願いながら。 空にぼんやり浮かぶ月は 薄目を開けてその様子を見ているようだった。 人もあの蝉も、大差ないのかも。 ーーー少し風が冷たくなった。 近づく新たな季節を感じる。 蝉の声も小さくなっていた。 このままで何が変わるだろう。 2つの季節を、ここ島原で過ごした。 だけど何か進展が? "ーーー梅の花のようだった" …私を助けてくれる? 「おい、ゆ、…霜月。久しいな。」 …私を、助けられる?
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