動機

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【A】 「は?」 気まぐれな親友の トンチンカンなご忠告。 「このお店では、俺がお前でってことにした方がいいと思うよ。」 「なんでそんな面倒くさいこと」 Pは真面目ぶった顔で俺を見つめる。 「だって、そんな乱れた女の子関係でJAのデザイナーですって胸張って言える?」 「まぁ、言えるよ別に。」 「女の子とエッチして作ったピアスです、って?」 「は?なんだよそれ。別にいいんじゃね?インスピレーションは人それぞれってことで」 やたらと突っかかってくるなぁ。 「Pはさ、厳しすぎるんだよ。そーゆーコトに。そーんな綺麗な顔してんだから、もっと遊べばいーのに」 「遊ぶ?」 「ほら、可愛い子がいーっぱいいるじゃん。そこらへんに声かけたらさ、Pだったらイチコロっつーの?」 「あのさぁ、お前、マジでサイテーになっちゃうよ」 マジでサイテー、ね。 だから何だよ。 みんなそれを求めてんだろ? 「なーんか今日のP、ムカつくわ。機嫌悪いんだか何だか知らねーけど、当たるなら他にしてくんね?」 「いや、機嫌とかじゃなくて俺は」 Pの言葉を振り切って カウンターから離れようとした瞬間 「Aさん?」 まさか 「また、会えて嬉しいです」 薄暗い店内に光る 蜂蜜のような髪色と 白い肌。 その視線の先は… 「あぁ、ハチミツちゃん。今日は遅いシフトなんだね。」 ん? 「はい、体調崩した人に代わって入ったんです」 あれ?なんでP? 「あの、さ…」 思わず一歩前に出る。 「あ…あの、ときの…」 俺とPの顔を見比べて ゴクリと喉を鳴らした男の子は 「すいません…でした」 小さな声で、頭を下げた。 「いや、いいんだよ。まぁちょっとびっくりしたけど。つーか、結構チカラ強いなぁっていうか」 「でも…!」 「ん?」 頭を上げた彼の目には さっきまでのキラキラとは別の、 そう、敵意って奴が 静かに確実に燃えていて 「お客様に手を上げたこと、ホントに反省しています。でも、俺は貴方みたいな人、嫌いですから」 「え…」 Pに会釈して そそくさと仕事に戻るその子を 俺はただただ見つめるしかなくて いた。 俺が、JAのデザイナーだって 胸を張れない相手。 俺の作品を 唯一理解してくれる人。 俺のこと 女にだらしないバカな男だって 知っている人。 「P、俺…ダメかも」 あー俺、 涙出ちゃうかも。 .
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