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橋の見えるところまで来ると、 息が苦しくなる。 激しい動悸を伴って。 今日は帰ろうか? いや、帰るまい。 橋を渡り終えるまでは帰るまい。 帰れないのだろう? 何故? ふふふ、家はもっと恐ろしいもんな、そうだろう? 言わなきゃ駄目かい? つまり、君は逃げているのだ。 全くわかってないね。君は、本当に馬鹿だな。 感情で物を言うのはよせ。 そうだな。例えば、君が信じてやまない信念、つまり君を絶対に裏切らない事実ってあると思う? ない。 そう言うだろうと思ったよ。だが、君はフォークで目をえぐられたいか? 何が言いたいんだ? 君はフォークで目をえぐられるという事実が君の身に降りかかってきたとき、甘受できるか? できるわけないじゃないか。 橋の中程で、発作が起こった。 僕は、どうしたと思う? よかった、今日も生きていたよ。 僕は、今日も生きていた。 ああ、何という幸福なんだろう。 でも、この幸福も、 僕という、浮遊物の視点で、 5時間先に立ってみれば、 全部ウソになってしまう。 そのウソは、僕の真実でもあり、 その逆説を具現化して、一つ一つのコンポーネントを集めれば、 僕という、存在が出来上がるのだろう。 だが、その僕という物体はあるとき一瞬で瓦解するかもしれない。文字通り、それは肉体的な瓦解でもある。 君は不可避の瓦解を甘受できるか?
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