*オワリからハジマリを促す*

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腰掛けていた椅子から立ち上がり窓辺に行けば、透き通った青空が視界の奥に広がっていた。 現世のように、人が争うこともなく、災害が起こることもない……それが、この空間だ。 『正式にはまだあなたは死んではいません。ですが、死は既に確定していて、覆る事もありません。』 『は?』 『簡単にいうと、現世にはもうあなたの肉体はないので、その点に関しては『死んでる』と言えるでしょう。ですが、魂はシルビアに召喚されこの場にいますから、まだ『あの世』には行けていないので、生きているという事になりますね』 『アタシにはラフィネの言う事がさっぱり解らん』 『まぁ、現世とこの空間とあの世の三ヶ所に、それぞれのあなたが居て、別の意識のなかで同じような生活をしていました。その三人のあなたの内の一人が亡くなったと思って頂ければ良いと思います』 相変わらず私の隣で首を傾げているシルビアをよそに、彼はどうやら理解をしはじめてくれているようだった。 『じゃあ僕は二人目の僕と言うことですか?』 『そうなります』 すると彼は腕をくみ、顎に手を添えて何やら眉間にシワを寄せはじめた。 『しかし、なぜ僕はここに?それに、貴女方の言うように、ここがあの世へいく手前の世界だとして、生きていた世界では、それこそ同じ時間に他にもたくさんの人が死んでると思う。……なのにここには僕以外人がいない。他の人はどこへ?』 疑いや不安の眼差しを向けられるが、それでも、騒ぎ立てる事もなく、自分の死を受け入れているのか彼は他の魂とは違い落ち着いていた。 『それは、あなたがシルビアに選ばれたからです』
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