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哀愁がため息になって口から出た。
見てご覧よ、この夕日を。
野良ヒーローが出て来て襲ってくるなんてありえないくらい平和な赤さじゃないか。
それが分かるだけ僕も、大人になったということだ。
ビニールから新しいうまい棒を取り出して、太股にぶつけるスタイリッシュな開け方をする。
失敗すると粉々になるので、素人にはあまりオススメ出来ない。
夕日を眺めつつ歩く通学路で、うまい棒を食べる。
なんとも幸せな時間だ。
「……んっ、ん?」
それに気付いたのは三本目のうまい棒を咀嚼していた時だった。
夕日から煙が上がっている。
いや、それは勘違いなんだった。
西の方で火事が起きたらしい。
眩しさに目を細めながら、その煙を辿って下を見る。
かなり遠くから、細い煙が出て来ていた。
「火事だなっ」
そう判断するのに、大した時間は要さない。
僕のような子供はすべからく事件や事故を好むが、特に火事というのは興味をそそるものだ。
火元はどうなっているのだろう。
被害者は?
まだ火は燃え盛っているのだろうか。
僕の好奇心は止まることを知らず、いつの間にやら火元に向かって走り出していた。
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