ヒーロー見参! ただしボロボロ!

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その点が、細かく確認出来る距離まで近付いてくるのには、そう長い時間が掛からなかった。 黒はそういう服で、どうやらそれは人……いや、ジャンプしながらこちらに来ているので、ヒーローだろう。 ぞっとした。 手には……駄菓子。 頭に浮かんできたのは、低学年の頃信じていた脅し。 『買い食いをしていると野良ヒーローに襲われますよ』 顔のぼやけた女教師に耳元で囁かれたような錯覚。 怖い、怖い怖い! 逃げなきゃ。 それは分かっているのに、前に行けばいいのか後ろに行けばいいのか、塀を乗り越えて隠れた方がいいのかの判断が出来ない。 周りを見回しても、活路が見当たらない。 そうしている間にも黒服のヒーローはどんどん近付いてくる。 とんでもない脚力で跳び続け、あと二、三回のジャンプで目の前に来そうになっていた。 「どうしよう……」 いくら考えても、その場で足踏みを繰り返すだけになる。 「どうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしよう!」 パニックだ!
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