5人が本棚に入れています
本棚に追加
その点が、細かく確認出来る距離まで近付いてくるのには、そう長い時間が掛からなかった。
黒はそういう服で、どうやらそれは人……いや、ジャンプしながらこちらに来ているので、ヒーローだろう。
ぞっとした。
手には……駄菓子。
頭に浮かんできたのは、低学年の頃信じていた脅し。
『買い食いをしていると野良ヒーローに襲われますよ』
顔のぼやけた女教師に耳元で囁かれたような錯覚。
怖い、怖い怖い!
逃げなきゃ。
それは分かっているのに、前に行けばいいのか後ろに行けばいいのか、塀を乗り越えて隠れた方がいいのかの判断が出来ない。
周りを見回しても、活路が見当たらない。
そうしている間にも黒服のヒーローはどんどん近付いてくる。
とんでもない脚力で跳び続け、あと二、三回のジャンプで目の前に来そうになっていた。
「どうしよう……」
いくら考えても、その場で足踏みを繰り返すだけになる。
「どうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしよう!」
パニックだ!
最初のコメントを投稿しよう!