第三章 迷い込んだ霊

9/36

3406人が本棚に入れています
本棚に追加
/1899ページ
 こんなものが死んでまで出てたまるか、と思いながら、爺さんを背中に背負って、明路のところまで戻る。 「あ、背負えるんだ?」 と言った明路に、こいつ、やっぱり霊だとわかってるな、と思った。 「明路。  今日、あの時計持ってる?」 と訊くと、彼女は首を振る。  内心、舌打ちしていた。  もっと常に身に付けるものにすべきだったと思う。 「そういう日もあるわよ」  そう言った明路の言葉に、何故か慰められている感じがして、複雑な気分になった。  明路の言う『そういう日』とは、時計がなくても見える日、という意味だろう。
/1899ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3406人が本棚に入れています
本棚に追加