第三章 迷い込んだ霊

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「この辺りに何かあったのか?」 「うん。  お堂がの」 「お堂?」 と明路が訊き返す。 「お地蔵さんの入ったお堂があったんじゃ」 と言う爺さんに、あんたがお地蔵さんじゃないのかと言いたくなる。  そういう穏やかな風貌だった。 「わしゃ、そこへ行く途中に死にでもしたんじゃろうか。  どうもあれが気になっての。  この辺りをぐるぐると廻っておったんじゃが、どうしてもお堂のあった位置に行けんのじゃ。  今日まで、この建物の塀の向こうに入れんでのう」 「いや、待て」 と手を挙げた。
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