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「この辺りに何かあったのか?」
「うん。
お堂がの」
「お堂?」
と明路が訊き返す。
「お地蔵さんの入ったお堂があったんじゃ」
と言う爺さんに、あんたがお地蔵さんじゃないのかと言いたくなる。
そういう穏やかな風貌だった。
「わしゃ、そこへ行く途中に死にでもしたんじゃろうか。
どうもあれが気になっての。
この辺りをぐるぐると廻っておったんじゃが、どうしてもお堂のあった位置に行けんのじゃ。
今日まで、この建物の塀の向こうに入れんでのう」
「いや、待て」
と手を挙げた。
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