第二章『The past....』

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 腕をブンブンと振って少女にお礼を言う透流。我ながら現金な奴だと透流は思う。 「そっ、そう……? それならよかったんだけど」  少女はその透流の狂喜っぷりに苦笑しつつ、視線を逸らした。透流は途中痛みに表情を歪めたが、当初よりも痛みは引いてきたようだ。  しかしそこで透流は気付いてしまう。……今手を握っている少女の背中から、一対の羽の存在に。 「ぁ……」  途端、透流の手がピタッと停止した。だんだんと永瀬の顔から血の気が引いていく。  少女は最初何が起きたのか訳がわからなかったが、やがて透流の視線を追って自分の羽が原因と気付いた。そこでやってしまったという感じに目元を抑えながら羽を縮める。 「ぁ~これ、ね。なんて説明すればいいのかしら……って、ちょっと?」  腕を組み思案の中、ふと透流が距離を離していく事に疑問を感じ、思考を中断して呼び止めた。  しかし当人……オカルトが嫌いである。羽の生えた少女とて例外ではない。 「お前、ぼぼぼっ僕をどうするつもりだ!? 何が望みなんだ!?」 「はぁあ? ちょっと待って。勘違いしてるようだから言っておくけど、私は別にあんたをどうこうしようなんてこれっぽっちも考えてないわよ。ただあんたを助けた、それだけ!」 「嘘だねッ!! そうやって人を散々弄んで、一体お前は何が狙いなんだよ!?」 「はぁ……」  助けた恩も忘れて散々喚く透流に痺れを切らしてか、少女は深い溜息を吐く。そして、暗い場所でもわかるその紅い瞳をギロッと透流に向けつつ不敵な笑み浮かべた。 「そう言うのも楽しそうだとは思うけどね……別に良かったのよ? あの低俗妖怪どもに殺されゆくあんたを放っておいても。それを静観するのも悪い選択肢では無かったわねぇ」 「うっ……ぐ」  透流はその少女の気迫に気圧され押し黙る。しかしながら透流も言葉が通じるだけあり、先ほどの妖怪と比べて大分まともに対応できている。  ……まぁその行動を少女が『まとも』と捉えるかは別問題だが。
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