第二章『The past....』

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「じゃぁ……本当に僕のことは単純に助けただけで、どうこうするつもりってのは」 「だからさっきからそう言ってるじゃない。えっ、何、もしかして私喧嘩売られてた……?」  こめかみをひくつかせながら少女の口から呆れの声が漏れる。勿論透流にはそんなつもりはないが、事情を知らない少女にとってはそういう風に捉えられたらしい。  しかしそこで一々いざこざを起こしても仕方ないと判断した少女は、何かを諦めたように息を吐くと傍に置いてあった透流の鞄を手に取った。 「まぁいいわ……ほら、これあんたのでしょ? これ持ってさっさと帰っちゃいなさい。また変なのに襲われない内にね」 「ぁっ、うん……そうだな」  透流はそろそろ~っと自分の鞄を取りに少女に歩み寄る。 「あんたさぁ……警戒するのはいいけど、もっとマシに動けないの? 怪しすぎるわよ」 「失敬な! 怪しいのは貴様とて変わらんぞ! この行動にはれっきとした崇高な理由があってだな……」 「だぁぁぁもう一々鬱陶しいわねぇ! いいからさっさと受け取りなさいよ!! 鞄一つ大人しく取れないの!?」  少女の言葉に透流はつい足を止めて文句を垂れる。透流にとってはオカルトを纏うこの少女は、未だ『得体の知れないモノ』という認識なのだ。みっともないとか不恰好とか、そんなプライドは捨てて掛かる意気込みで臨んでいる。  そんな透流の突っ掛かり具合に苛々して怒鳴り返す少女。手に持つ鞄を突き出したまま、むすっとした表情でそっぽを向く。  鞄を取って、この丘を抜ける。それで今夜の出来事は綺麗さっぱり忘れよう……透流はそう心に決めて、少女の手から自分の荷物を受け取った。 「よし、中身も無事……と。ぁ~、まぁ色々文句は言っちゃったけどさ……とりあえず助けてくれたことには礼を言うよ。ありがとう」 「ぇっ? あっ、ま……まぁ私もたまたま近くを通って気付いただけだし、助けた相手が死んじゃってたら流石に後味悪いしね! うん……お礼を言われるほどでもないっていうか……」  少女は透流の人の変わり様に、思わず混乱してしまう。どう対応すれば良いか解らなくなって、後半の台詞に至っては蚊の鳴くようなほど小さかった。
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