第三章『激情の果て』

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「思い出したぁぁぁあッ!!」  検索件数1件。小学一二年の時に確かに一緒のクラスだったのを思い出す。確か最初の席の時は前にこの女の子が……酉原が座っていた。  透流は電球でも点った様に表情を大きく広げて叫ぶ。その声にびくっと酉原の体が震えるが、そんなのに気にも留めず透流の視線は酉原の表情を捉える。 「いや、へぇええ。小学校卒業以来会ってなかったけど、変わりすぎじゃない!?」 「へ? そ、そうかな? 自分ではあまり判らないけど……」 「いや変わったって! ホント名前言われるまで判らなかったし。ていうか、正直言うと……名前言われても直ぐにピンと来なかった。ごめん」  酉原は苦笑した。まだ朝の10時を過ぎた時間帯……車の通りは少ない。  透流と酉原はそのまま一緒に小学校方面へと歩くことにした。 「でも、永瀬君は変わらないね」 「そっか? 色々と手を付けてるつもりなんだが……」  透流がそこまで言いかけると、酉原はかぶりを振って微笑みを返す。 「そういうことじゃなくて、中身というか雰囲気というか……いつも元気で、一緒にいるだけで元気を貰える」 「う~ん。……まぁ翔司には『ガキっぽい』っていつも言われてるから――ぁっ、そうそう中学も高校も同じなんだよ、翔司と僕」  同じ小学時代を過ごしたもう一人の人物を透流は口にする。そういえば小学生の時の富岡は、今よりも大分はっちゃけていた気がする……丸くなり過ぎだ、と透流は心の中で嘆いた。まぁそんなと事をいった所で無駄なのは十分承知しているが。 「へえ、そうなんだ! 富岡君も元気にしてる?」 「まぁそれなりにな。あいつ、今家離れて一人で暮らしてるんだよ。なんでも家の事情だから……って。でも高校上がって直ぐだもんなぁ……何か先越された感あるんだよ」  その後も他愛の無い話で盛り上がって、小学校を正門から覗きながら思い出話に花を咲かせた。そして小学校の外周を一周して、酉原と出会った場所まで戻ってきた時には11時を回っていた。
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