第三章『激情の果て』

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「ただいまー……っと」  そのまま酉原と別れ、自宅に帰還。思いの外充実した時間を過ごすことができた。  別れ際に酉原の表情が曇ったのを見た瞬間、ざわっと胸が騒いだような気がした。しかしそれも一瞬の出来事……透流はそのまま帰路に就くことにしたのだ。 「あれ……?」  そして自室に戻ると、今朝届いた謎の荷物が床に転がっていた。確か出かける前はパソコンの隣に置いておいた筈だ。  逡巡した後、透流は溜息交じりにとりあえず床に転がったままの荷物を、何処か邪魔にならない場所に移動させようと―― 「……ッ!?」  近づいた所で急にその荷物が突発的な音を立てて動いた。思わず体をびくんと震わせて飛び退く。  なんだ? 何が起きた? 見間違いではなければ、確かにこの荷物基ダンボール生物は飛び跳ねたぞ。  一体何が入っているというのだろうか。差出人がわからない以上、何が入っているのか皆目検討もつかない。  ……初動からたっぷり二分。あれからダンボールが動きを見せることは無かった。  改めて、恐る恐るとダンボールに近づく。額の汗が目に到達する前に拭い、ゴクリと唾を呑む……伸びる手の先には、未確認ダンボール。  その指先がダンボールに触れる。ダンボールは依然として動きを見せない。透流はそのまま腕に力を込めて持ち上げた―― 『オーイッ! そこにいるのなら、いい加減開けてくれニャいか!? ぃい息が……! 息が、苦し』 「ギェェェアァァァシャァベッタァァァァ!!」  透流は手の内で突如暴れる(+叫ぶ)ダンボールを容赦なく突き飛ばして部屋の角まで逃げる。丁度ダンボールと対角線上になるように。  投げた拍子にダンボールは鋭利な場所にぶつかったのか亀裂を走らせており、そこから更に内側からビリビリとその亀裂を広げるような音が聞こえてくる。  いやいやおかしい。いくらなんでもこんな小さなダンボールから声がするはずなんて無いのだ。どこのスーパー人間ですか。
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