第三章『激情の果て』

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「さて、着いたぞ小僧」 「えっとぉ……」  唐突に訪れたゴールに、透流は思わず目を瞬いた。  大通りを横断してだんだんと人気の無い道を辿り、到着した場所。  地元民であった透流でさえもその場所の存在は知らなかった林道が、目の前には展開していた。その入り口は草に覆われ、今は手入れされておらず使われていないことが判る。  家を発つ前、アルザは確かに言っていた。『お嬢の待つ館へと案内する』……と。  つまり此処に月浦が……透流の人生を大きく変えた人物がいるということになる。  しかし何処にもその人物は見当たらない。そもそも館らしき建造物すら視界に存在していないのだ。 「ちょっと待ってくれ。何も無いじゃないか! どういう――」 「小僧。いいからおれっちに着いてこい。決して離れるでニャいぞ?」  透流の言葉を遮って先ほどより強く告げると、アルザはそのまま林道へと足を踏み入れる。訳が解らないまま、透流はただ言われたとおりアルザの跡を着いていくしかなかった。  入り口を草がカモフラージュしていただけで、それを越えると道ははっきりとしていた。アルザは無言で歩き続ける。途中にある分岐点を右・右・左と曲がり、やがて三叉路に到達。 「こっちニャ」 「えっ、そっち!?」  その正面三方向に別れる道を……アルザは真横に向かって歩き出した。そっちの方向に道は無く、透流は慌てて声を掛けた。  だがアルザは歩を止めない。仕方なく透流はアルザについていき、思い切って草の壁を飛ぶようにして突き抜ける。刹那、視界が真っ白に染め上げられ、浮遊感を得たかのように体が軽くなった……
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