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「よっし終わったぁ!!」
電気も点けない、何処にでもありそうな教室のど真ん中の席で、歓喜の叫びを上げる透流。夕日色に彩られたその教室で、その絶叫は耳を劈くほどの反響を起こしていた。
他に教室に居るメンバーは二名。
先ず一人は教室の角で読書をしている少女……室井 百合佳-ムロイ ユリカ-だ。白いワイシャツ、灰色を基調に襟と袖に水色の二重線が引かれたブレザーと、紐状の赤いリボンを着用。下にはベージュのチェック柄スカート……何処にでもありそうなありふれた制服だ。
紺色の腰まで伸びる長髪が、窓から吹き込んでくる緩やかな風に靡く。それを手で軽く抑えながら、先ほどの叫びに眉を寄せることも無く温和な表情で透流の席までゆっくりと歩いていった。
「ん~、どれどれ……」
透流の机に置かれたプリントを手にとって目を通していく。このクラスの委員長でもある彼女は、彼の課題提出の監視兼手伝い役としてこの教室に残っていた。
「……うん。問題ないですね~」
「だろ? この僕が本気出せばこんなもんちょちょいのちょいだっての!」
そこで透流と室井はハイタッチを交わす。
「……だったらこんな事になる前に本気を出してくれ。待つ側のことも考えろよ」
もう一人、眼鏡を光らせながらその奥に見せる鋭い眼光を友に向ける少年……富岡 翔司-トミオカ ショウジ-。室井や透流と同じ柄のブレザーに紺一色のズボンを身に着け、教室窓辺に体を預けながら愚痴を零す。
「んも~、なんだよ。盛り上がってきた所で……ていうか、僕は別に待ってもらわなくても構わなかったんだけど?」
その台詞を聞くや否や、富岡は自分の天然パーマを無造作にわしわしと掻きながら盛大な溜息を吐く。
富岡は単純にこの小学生の時からの腐れ縁を待っていただけで、本人はこの場所に用は無い。
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