第二章『The past....』

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 コンビニで肉まんを買って食べつつ、帰路を歩く透流と富岡。空は完全に青に侵食されていた。星はまだ一つ二つ輝きだした頃である。それでも空に浮かぶ満月の輝きが、他の星々を凌駕していた。 「なぁ、一人暮らしって楽しいか?」 「なんだよ、藪から棒に……まぁ、別に楽しいって訳じゃないけどさ。新鮮な感じはするよ」 「そっか……」  透流はいつものテンションはどこへやら、最後に気の抜けた返事を返した。  何か調子の狂う会話だと富岡は感じたが、やがて透流の真意を汲み取ると軽く透流の頭を叩いて元気付ける。 「わぅちッ!?」 「止めとけ、お前にはまだ早い。第一お前の家結構……どころかかなり大きいじゃないか。あんなに良い家持ってる癖に、そこから出て一人暮らしするほどお前は自立できてねぇよ。ていうか阿呆だ阿呆」  言って肉まんの最後の一口を頬張ると、透流の進行方向とは違う道を進み始める。いつも二人が別れる十字路に到着したのだ。 「じゃぁな、透流。また来週」 「ん、ぁあ……またな」  富岡は手を振ってその場から消える。透流はその後姿を暫く見つめていたが、やがて自分の暗いイメージを払拭するかのように強く息を吐いた。 「……よし、気持ち入れ替え! こっちも寝床に帰るとするか」  富岡と別れた十字路を発つ。先に見える公園を抜ければ家まですぐだ。  帰って、飯を食って、風呂に入って寝れば休日が待っている。特にこれと言った計画は決めてないが、適当に一人で少し遠くまで散歩でもしようかなと透流は考え、胸を躍らせた。
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