第二章『The past....』

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 秋雨公園。近所では此処以上に広い場所は無い。というのも、この公園は裏に丘がありそこを含めて『秋雨公園』と呼ぶのだ。  その公園の中を通り、透流はついでにと肉まんの包装紙をゴミ箱に捨てる。しかし流石とも言うべきか、公共の場……分別がなっていない。 「サッカーボール……パンクしてるわけでもなさそうだし。これ、まだ空気を入れれば遊べるだろう。勿体無い事を」  ゴミ箱にシュートされた萎れたサッカーボールを見て一人ごちる。裕福な家庭で育つ子どもは物扱いが酷くなる傾向あるとどこかで聞いたことがあるが、非常に嘆かわしいことである。掻くいう透流もその一人なのだが…… 「……ん?」  ふと後ろに気配を感じた。透流はばっと後ろを振り返る。なんて事は無い、先ほど通った道だった。  冷や汗が透流の首を伝い、ワイシャツに吸い込まれる。ほっと息を吐いて透流は進行方向へと向き直った。 「……むぉ」  いた。五、六歳ほどの少女が……背中を向けて座り込んでいた。  ほんの数秒までは何も無かった筈。明らかにおかしい……透流はゴクリと喉を鳴らす。  気付いていないのだろうか? だとしたら別の道から迂回してしまおう。何かは知らないが、これはやばいと透流の脳が警鐘を鳴らしていた。  ここにいると落ち着かない……苛々する……胸糞悪い。だがそれはこの少女からではない。いつの間かこの公園一帯の雰囲気から、あらゆる負のイメージが湧き出ているような気がした。 「……ッ!!」  その少女と、目が合ってしまった。透流はそのまま動けなくなってしまう。金縛りとかで動けなくなった訳ではない。脳が信号を送れないのだ。まるで、蛇に睨まれた蛙のように……  その少女は黒のロングヘアーで、白いワンピースを着ていた。それだけならば問題ない、何処にでもいそうな少女だ。  ――ただ一部分、顔のパーツがあべこべになっていること以外は。
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