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右目は口の位置に。左目は左頬の位置に。鼻は左目の位置に。口は額の位置に。
透流は確信する。この世の物ではない……物の怪の類だと。自分の嫌う、『オカルト』の領分だと。
ペタペタと、少女の素足が公園の中の舗装された道を踏む。それは確実に透流の許へ向かっていた。
そこで透流の足は漸く動くことが出来た。引き返し、公園を出て脇道を使おうと……
「……ィぃい――っ!?」
振り返ると既に、少女が道を阻むように立ってたのを見て短く悲鳴を上げた。背後を見れば先ほどと同じ同じ少女が此方をじーっと見ている。
動悸が治まらない……夢なら早く醒めて欲しい。という浅はかな願望も、現実の非情さが打ち砕いていく。
入ってきた側の少女が近づいてくる。もうこの足音を聞いただけで恐怖心が募ってきた。
来るな。来るなくるなくるな……クルナクルナ……!
口は明らかに笑っているが、透流にはこの少女が何故笑っているのか……それを考えるだけで悪寒がする。
「くそッ!!」
透流は二人の少女から逃げるように、更に公園の奥深くへと入って行った。
気が動転して正常な思考が持てない。滑り台とシーソーの間を走り抜け、木で出来た階段を途中躓きそうになりながらも駆け上がっていく。
「くそっ、くそっ! くそぉッ!! 何だよあんな不気味なもんはよぉ!?」
公園から走って一分ちょいで丘に出た。遊具は一切無く、崖の部分の境界線として金網フェンスが取り付けられていた。しかしこの金網フェンスは一部が結構緩く、寄りかかると結構な角度に傾くため何度も工事をして直していた。
しかしその度に緩くなり、今は工事は行わず柵で囲いが出来ている。
この丘には桜の木があちらこちらと生えていて、先月も此処で花見をする人も多かったのだ。何せ此処には有名スポットと銘打たれた樹齢千年を越す大きな桜の木がある。
「はぁ、はぁ……はぁ、全くもう。ホント何なんだよ」
透流は逃走中に何度も呟いた言葉を再度吐き捨てた。
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