プロローグ

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険しい岩山を歩いていると、洞窟が見えてきた。 すると洞窟の中からとても大きい狼が出て来た。その狼は毛が白く目が赤かった。その姿を見た巫女は深々と礼をした。それを見た女も慌てて礼をした。 狼は巫女達の側まで行き話し掛けた。 「人間よ………例の子とはその子か?」 「はい……その通りです。」 巫女の声に反応したのか、女に抱き抱えられていた子供がゆっくりと顔を上げ周りを見回した。 「母様………ここはどこ?」 「…………。」 「母様?」 女はゆっくりと子供を降ろした。そして頭を優しく撫でながら言った。 「良く聞いて…… あなたは今日から、ここで暮らすのよ……。」 「母様も一緒?」 「いいえ…… あなたはここで、山の主である狼達と一緒に暮らすのよ。」 「嫌だ!!母様も一緒がいい!!」 「無理なのよ…… もう里で決まった事だから……」 子供の目から真珠のような涙が次々に溢れ出た。 女は子供を強く抱きしめた。子供に釣られてか女の目から真珠のような涙が溢れ出てきた。
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