~1st GAME~

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俺は距離を詰める事もせず、開く事もしないでただ身構えていた。 それに比べてゾアはただ棒立ちしていた。 文月(ずいぶん余裕だな…………何かあるのか?) 相手は魔法だってスキルだってエフェクトだって使える。 しかし俺は何一つ分からない。 あるのはケンカ殺法…………いわば喧嘩慣れしてるくらいだ。 ゾア「そっちから来ないなら…………こちらから行きますよ」 突き出されたゾアの手から、黒い霧がまとまった様な球体が現れた。 文月「おわっ!?」 常盤が簡単なチュートリアルの時に見せてくれた火の玉とは違って、いきなり俺に向かって飛んできた。 なんとか横っ飛びで回避することが出来たが、黒い球体が当たった地面が大きくへこんだ。 文月「属性は……闇か?」 あの黒い球体は多分だが闇属性の魔法だろう。 だけど魔法を使う際にはやっぱり多少の時間がかかる。 なら…………… 体制を立て直した俺は勢い良くゾアに向かって駆け出す。 文月(使うのに時間がかかるなら…………時間を与えなければいいだけだ!) ゾアとの距離は約10m前後…………全力で走れば一気に縮められる距離だ。 走っている勢いをそのまま使い、振りかぶる形でパンチを出す。 ガッ!!! 文月「なっ!?」 俺のパンチは確かにゾアの顔をとらえたはずだった。 しかしゾアは吹き飛ぶ訳でも無く、ダメージすら受けていない。 まるでゾアの前に見えない壁があるかのように………… 俺は急いでバックステップをして距離をとる。 文月「どうゆう事だよ!?」 ゾア「『魔力壁』です」 文月「魔力壁?」 ゾア「自分の魔力を消費して作り出す防御。 普通の防御より数倍固く、さらに貫通ダメージを受けません。 しかし魔力の消費は少し多いのが使い道の難しさなんです」 つまり普通にガードしても少しダメージをくらってしまうが、魔力壁を使えば魔力ゲージを減らす代わりに高度な防御力を作れるって訳か……………… 文月「………………めんどくせぇ」 ゾア「?」 文月「確かに最初は現実じゃ有り得ない魔法とか見て興奮とかしたけどさ、いざ戦うとなるとこうもめんどくせぇんだな」 この時俺は気付いていなかったのだ………………………ほのかに俺の体が光っていたことに。
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