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文月(動揺………してるか?)
イマイチ上手く働かない頭で考える。
俺は一歩ずつ近付いているはずなのだが、距離が全く変わらない。
つまり…………俺が近付くのに合わせて距離をとってるのか…………
なら話しは早い。
まだ黒い雨が降り注ぐ中で、屋上には所々に水溜まりが出来はじめていた。
文月や星野が歩く事に、足は水溜まりを踏み付けてパチャパチャと音を立てていた。
文月「うっ…………」
歩いて近付いていた文月は、足がもつれて膝をついてしまった。
四つん這いの体制で踏ん張り、なんとか倒れるのは免れた。
星野(しめた、チャンス!)
膝をついた文月を見て、星野は素早く手で大きく半円を描く。
星野「流れぼ………しっ!?」
星を出そうとした瞬間に、何かに足をとられて少し前のめりに体制を崩した。
描いた半円から出た星は前のめりになった分、文月の前の地面に直撃して粉々になった。
星野「一体何が……………………っ!?」
足元を見たら、雨で出来た黒い水溜まりがまるで沼の様になっていて、足がのまれていたのだ。
星野の足をとらえた黒い水溜まりをたどると、文月が四つん這いになる際についた左手にある小さな水溜まりと繋がっていた。
文月「ようやく捕まえたぞこの野郎」
顔を上げた文月の左目は、紫色に変色していた。
星野「な、なんですかこれっ!」
文月「俺のもう一つのスキルで作った魔法だよ」
ゆっくりと立ち上がり、文月は首を軽くほぐすように回した。
星野「もう一つ?そんな………スキルは一人に一つのはず…………」
文月「まあな、俺も元々は一つだぜ。
片方は後から手に入れたんだ」
膝くらいまで沈んだ星野と、立ち上がった文月の距離は8mも無い。
文月「星野の究極必殺技っての見せてもらったけどさ、俺にはまだ究極必殺技ってのがないんだ。
超必殺技は一つあるんだけどな。
まあ、もし究極必殺技があったら見せてやりたかったけど、俺は最後まで俺の戦い方をさせてもらうぜ!」
そう言って文月は星野に向かって勢いよく走り出した。
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